思考が工業製品になった日

思考は計算だった

LLMが登場して、一つのことが明らかになったと思います。

「考える」という行為は、パターンの処理だったのです。

人間にしかできないと思われていた思考が、計算によって再現できてしまいました。
つまり、人間の脳は一種の計算機だったということです。

これは衝撃的な発見かもしれません。
でも私は、どちらかというとワクワクしています。新しい可能性が見えてきたからです。

思考が工業製品になった

人間の思考には、いくつかの制約があります。

所有できません。誰かの脳を買うことはできません。
工場で生産できません。考える力を製造ラインで作ることはできません。
プログラミングできません。人の思考を直接コントロールすることはできません。
一人に一つ、24時間しかありません。

でもLLMは違います。

半導体と電力があれば生産できます。
工場でスケールできます。
プログラミングで方向づけできます。
複製できます。並列で動かせます。

思考が、工業製品になったのです。

これは何を意味するのでしょうか。
少ない人間で、大きな思考を持てるようになりました。
1人が1000人分の「考える力」を調達できる時代が来たのです。

これまで「人を雇う」しかなかった知的リソースが、電力と半導体で手に入るようになりました。

Agentの登場

2025年の春頃、もう一つの大きな変化がありました。
「Agent」という概念と実装が次々と現れたのです。

これまでのLLMは、あくまで「会話」がメインでした。
こちらが質問して、AIが答える。こちらが相談して、AIが提案する。
でも、実際にコマンドを実行したり、ファイルを編集したり、何かを「する」のは人間の仕事でした。

Agentが出てきたことで、この構図が変わりました。
AIが自分でコンピュータを操作できるようになったのです。

思考がシステムに繋がった

これが何を意味するのでしょうか。

インターネットの向こうには、人間社会のあらゆるシステムがあります。
銀行、予約システム、ショッピング、コミュニケーション、仕事のツール。
人間の生活に直接関わる仕組みが、すべてコンピュータで繋がっています。

計算可能になった「思考」が、そのシステムに直接アクセスできるようになりました。

考えることができて、かつ人間の世界に手が届く。
この組み合わせが、Agentの本質だと思います。

これからどうなるのか

次のステップは、おそらく物理世界への拡張だと思います。
AIがロボットを制御して、物理的な実験や操作を行うようになります。

コンピュータの中だけでなく、現実世界でも「手を動かせる」ようになるということです。

もちろん、そこには莫大な投資が必要になります。
すべての領域が自動化されるわけではなく、価値のある領域から順番に置き換わっていくのでしょう。

かつて車の製造ラインがロボットに置き換わったように、もっと広い範囲で、より汎用的に問題を解決できるようになります。
そういう未来が見えてきている気がします。

2025年春のAgentは、その大きな流れの中の一つの転換点だったのかもしれません。