namelessさんに誘われて、IAMASのオープンハウスに行ってきました。
完成した作品を並べる展示会とは少し違って、まだ制作の途中にあるものがそのまま置かれていたりします。何が見られるのかは、行ってみないとわかりません。
大垣祭で山を追いかけた夜に続いて、また誘われて出かける形になりました。
基板の中でLLMが鳴らすシンセ¶
いきなりこれです。
赤い机の上にArduinoが裸のまま置かれ、青と赤のジャンパ線が隣のモジュラーシンセに伸びています。ケースにも入っていません。
見た目はただの配線ですが、このArduinoの中でLLMが動いているそうです。インターネット経由でメッセージを送ると、それを受けたLLMがシンセのパラメータを変化させる。遠くから言葉を投げると音が変わる、という説明でした。
言葉と音のあいだに、機械の解釈が一枚挟まっているわけです。同じ文章を送っても、同じ音が返ってくるとは限りません。
中で何が起きているかが、机の上にそのまま出ています。
Ambient Friends がいる生活¶
この日いちばん気に入ったのがこれでした。「Ambient Friends がいる生活」という作品です。
羊のような、正体のよくわからない生き物がフェルトで作られていて、そこからコードが伸びてアンプにつながっています。ぬいぐるみはセンサーになっていて、これを持って歩きます。
磁気を出している製品に近づけると、音が鳴ります。
その音が、まったく可愛くありません。ノイズというか、サイバーというか、とにかく手触りのやわらかい生き物から出てくるとは思えない音です。
電子レンジもルーターも、そこにあるだけで何かを出しています。普段は気づきません。ぬいぐるみを持って部屋を歩けば、見えていなかったものが音になって聞こえてくるわけです。
見えないものが鳴るというのは、ちょっとずるい発明です。
空想の街の地図¶
別の部屋には、存在しない街の地図が並んでいます。
空想地図の研究と作品の展示です。テーブルには自作のZINEや書籍、それに実在する都市の地図が一緒に置かれています。架空の街を描くために、本物の街をどれだけ見ているか、ということでしょうか。
地図は情報を伝えるための道具のはずですが、伝える先の街が存在しないとなると、これは何なのか。しばらく眺めていました。
作るための場所¶
工房も開放されています。
緑色の昇降盤がどんと据えられ、壁際には木工の作業台が並んでいます。「昇降盤 使用禁止」と手書きの紙が貼ってあるのは、講習を受けていない人向けの掲示でしょう。
メディアアートというと画面の中の話に聞こえますが、実際には木を切って箱を作る作業がついて回ります。さっきのぬいぐるみも、誰かが手で縫っています。
AIが来た後の作品たち¶
歩きながら思っていたのは、作品の完成度が全体に高いということでした。
AIの発展でソフトウェアを書くハードルが一気に下がって、その影響が展示にはっきり出ています。以前なら「アイデアは面白いけど実装が追いついていない」で終わっていたものが、ちゃんと動く形になって置かれている。
プログラミングの民主化が、芸術表現の側にも届いています。
自分の手でコードを書くことが、作品を作る上での関門ではなくなりつつある。そうなると、残るのは何を作るかという部分だけです。ここから数年で、かなり大きな変化があるはずです。それが良いことなのかは、僕にはまだ判断がつきません。
帰りに大垣城へ¶
その後、大垣城のエヴァマンホールを見に行きました。
御影石の立派な台座に、説明板がはめ込まれています。エヴァのメカニックデザイナーである山下いくと氏が本巣市出身で、大垣城の別名「麗天城」から発案された、というようなことが書かれています。令和8年7月の設置なので、まだ真新しいものです。
蓋そのものは、思っていたより大きく見えます。
紫の初号機と、ピンクの背景に「結びは始まり」の文字。奥の細道むすびの地にかけているのでしょう。カラーマンホールは色が飛びやすいものですが、これはかなり気合いが入っています。
意外だったのは人の多さでした。次から次へと人が立ち寄って、しゃがんで写真を撮っていきます。地面の蓋一枚に、こんなに人が集まるとは思いませんでした。30周年の特別興行を観たときにも感じましたが、この作品はまだ現役なのだと改めて思います。
まとめ¶
- IAMASオープンハウス: 研究室・工房まで開放され、制作途中の作品もそのまま置かれている
- 場所: 岐阜県大垣市。名古屋からでも十分に日帰りできる距離
- エヴァマンホール: 大垣城の敷地内。令和8年7月設置。説明碑とセットで見られる
ぬいぐるみを持って自分の部屋を歩いたら、どんな音がするのか。あれが製品になる日は来るのでしょうか。