星の見えなかった夜が明けて¶
昨日は駐車場で車が動かなくなり、別の車で宿まで送ってもらいました。今日、直るのでしょうか。
朝、外に出ました。昨夜あれだけ厚かった雲が、地平線の際だけ切れています。
振り返ると、ホンゴル砂丘が薄紅に染まっています。ここから見ると、砂の山脈というより、寝ている生き物の背中のようです。
ゲルの中はこの有様です。スーツケースを開け放って、三脚とカメラバッグが床に転がっています。同室の友人も、ベッドから足を出して眠っています。
車は直りません¶
デリカは、直る直ると言われていました。結局、直りませんでした。
代わりに乗ることになったのは、別のガイドさんの車でした。白いトヨタの Fortuner です。
そして、その車も壊れています。
ダートで燃料パイプがちぎれたそうです。ガソリンを抜いて修理しています。ボンネットの下と車体の下に人が潜り込んで、朝からずっとこれです。
少し離れたところから、作業を眺めます。
そもそもデリカが動かなくなったのは、ここから離れたホンゴル砂丘です。
デリカはどうやってこのキャンプまで来たのか。この Fortuner はどこから現れたのか。
いま直しているのは、どちらなのか。分からないことばかりです。
そんな中、2時間くらいで直るらしい、ということだけがほんのりと伝わってきました。
きっと3時間はかかるだろう、と思いました。
私はサーバの保守の仕事もしていて、トラブル対応の時間を見積もるのがどれだけ難しいかは、実感として知っています。
まあ、3時間かかりました。そうなりますよね。
待つあいだ、東屋でクワスを飲みます。黒パンを発酵させた微炭酸の飲み物で、プージェさんがすすめてくれたものです。
カメラとジンバルはテーブルの上です。しばらくは使わないですよね。
車が替わるということは、ガイドさんも替わるということでした。
ここから先はナンザイさんが案内してくれます。燃料パイプが切れていた、この車のガイドさんです。
プージェさんはデリカを直して帰るそうです。新ズーチトラベルの方がウランバートルから部品を持ってくるとのことでした。
車が二台とも壊れているのに、不思議と不安はありませんでした。代わりの車もガイドさんも、いつの間にか手配が済んでいます。新ズーチトラベルの、この臨機応変なチームプレイのおかげです。
むしろ、砂丘を眺めたり、草原をラクダが歩いていくのをただ見たりする時間ができました。予定どおりに進んでいたら、なかった時間です。
もう一度、砂丘へ¶
直った車で、まずホンゴル砂丘へ向かいます。宿からはすこし距離があります。
昨日、ドローンをもう少し飛ばしたかったのです。
ゲルの柵の中にでラクダが歩きてきました。草を食んでいます。どっからともなくラクダが来るという・・
砂の起伏の真ん中に、僕が点のように立っています。
また落としました。
バックで飛んでいて、砂丘の存在に気づきませんでした。なんという不注意でしょう。斜面に擦った跡が、そのまま残っています。
拾い上げると、プロペラとボディに砂がついています。今回も飛べそうです。
ですが、こんなに落としてはいけません。もう少し考えて飛ばします。
出発¶
丘の上を羊の群れが列になって歩いています。空はすっかり曇りました。
舗装路に戻ります。前を行く一台のほかは、地平線まで何もありません。
チャーハンが食べたい¶
村に寄りました。ミニマーケットと食堂が一緒になった、水色の建物です。
他の人が食べているのを見て、急にチャーハンが食べたくなりました。
ナンザイさんに「チャーハンが食べたい」と伝えて、案内してもらいます。
出てきたのがこれです。細かく刻んだ肉が混ざっていて、上にきゅうりが載っています。
マギーソースという、小麦を原料にした醤油のような調味料をかけて食べます。これがおいしい。後でスーパーを見つけたときに、同じものを買いました。
荒野とツル¶
また荒野です。雲が低く垂れて、光が斑になって地面に落ちています。
車を降りて、しばらく撮りました。地平線が一直線です。
上から見ると、轍が何本も枝分かれして地平線へ向かっています。どれを走ってもいいわけです。
ナンザイさんが車を止めて、鳥を見せてくれました。
アネハヅルだと思います。モンゴルの草原に多い種です。ですが、こちらが構える前に飛んでしまいました。
バヤンザグ¶
着きました。バヤンザグです。
赤茶けた崖が、平らな砂の中から段になって突き出しています。
ここは1923年、アメリカのロイ・チャップマン・アンドリュース率いる調査隊が、世界で初めて恐竜の卵の化石を見つけた場所です。この発見で、恐竜が卵を産む生き物だと分かりました。ここから恐竜の発掘がブームになっていきます。
この赤い崖を「Flaming Cliffs(燃える崖)」と呼んだのも、アンドリュースです。
突端に女性が座っています。足元から先は、垂直に落ちています。少し離れたところに撮る人がいて、撮影の最中でした。インスタ映えというやつだと思います。
正直に言うと、景色そのものはよく分かりません。谷が美しいというわけでもありません。
ただ、ここから恐竜が出たという事実がいいのです。
崖の上にドローンとバッグを置いて、準備をします。少し暑いのですが、割と快適です。風は吹いています。強風警告が出るほどではありません。
上げました。赤い岩の塊が、砂色の平原にぽつんと乗っています。周りには何もありません。
崖は思っていたより長く続いています。縁に沿って、細い柵と人影が見えます。
観光客は結構来ています。手前にはキノコのような形に削れた岩が立っています。
後で調べたら、この露頭は7500万年前くらいのものだそうです。1億年前くらいかと思っていたので、少し新しかったです。
とはいえ、7500万年という数字も実感はできません。目の前にあるのは岩です。それが恐竜のいた時代の地面だと言われても、見た目からは何も分かりません。分からないまま、しばらく立っていました。
お土産はラクダ¶
崖のそばにお土産屋が並んでいます。恐竜推しかと思ったら、売っているのはラクダでした。
毛のラクダ、フェルトのラクダ、キーホルダーのラクダ。棚という棚がラクダです。
宿へ¶
バヤンザグから宿へ戻りました。日が落ちて、テールランプが点いています。
ナンザイさんは、ここで同僚に帰り道を説明していました。
夕飯です。白いご飯と紫がかった雑穀のご飯、肉の煮込み、それに別皿のサラダが並んでいます。
今日も同じ宿に泊まります。
4日目を終えて¶
- バヤンザグは1923年に世界で初めて恐竜の卵の化石が出た場所です。地層は約7500万年前のものです
- 見どころは景色より、そこで何が出たかという事実のほうです
- お土産屋は恐竜ではなくラクダを売っています
- ゴビで車は壊れます。デリカが動かなくなり、代車も燃料パイプが切れていて、朝から3時間のリフレッシュ時間ができました
- ドローンは2日続けて落としました。自分の不注意です
車とガイドさんが、一日で入れ替わりました。
プージェさんはウランバートルから届く部品を待って、デリカを直すそうです。直るのでしょうか。
この旅の記事シリーズ¶
モンゴル 8日間の旅(2026年8月9日〜16日)
- Day 1: モンゴル テレルジ国立公園 - 仁川経由のゲル泊と、ガソリンのない首都
- Day 2: ゴビ砂漠へ - ツァガーン・スワルガの断崖と、ゲルに降る天の川
- Day 3: ヨリーン・アム渓谷とホンゴル砂丘 - ヒゲワシの谷と、動かなくなった車
- Day 4: バヤンザグ - 恐竜の卵が見つかった崖と、直らない車
- Day 5: ゴビからウランバートルへ - 廃墟に散らばる骨と、700キロの帰り道
- Day 6: セミゴビからカラコルムへ - 廃墟で涼む馬と、ゲルの上の天の川
- Day 7: モンゴル最終日 - 草原を自転車で走り、最後まで羊でした