今日は運転手が替わります¶
昨日の Airbnb で朝を迎えました。
今日は草原を西へ、カラコルムまで行きます。モンゴルの旅も明日で終わりです。
朝ごはんは適当にその辺で買ってきます。逆光の歩道を、自転車が二台こちらへ走ってきます。出勤の時間です。
コンビニにはおにぎりが売っています。三角のフィルムに包まれていて、日本のものとほとんど同じ形です。隣はキンパ。上の段にはサンドイッチ。これは結構いいですね。
レジの横には揚げ物のケースがあります。何を買ったかは、正直あまり覚えていません。たぶんパンです。
車も替わりました。黒いプリウスです。セミゴビは舗装路なので別の車になるよ、ということは聞いていました。
フォーチュナーは修理に出す、というようなことも言っていた気がします。なにしろ燃料パイプを応急処置したままですから。
宿を出て、車がどこかに寄ったと思ったら、奥さんが乗り込んできました。え、奥さんも来るんだ。
聞けば、ナンザイさんは連勤で疲れていて、長い区間は奥さんが運転するそうです。車が替わることは聞いていましたが、奥さんが来ることは聞いていません。この旅はこういうことが多くて、物事が自然に流れていきます。こちらは流れに身を任せるだけです。
面白いことになってきました。
運転席は奥さんです。助手席には友人が座り、ナンザイさんは後部座席に収まっています。結局この日は、ほとんどの区間を奥さんが運転しました。
草原へ出ます¶
街を出ると、すぐ草原です。低い雲が山の中腹に垂れていて、その手前の丘に馬と羊が散らばっています。
ゴビの茶色を何日も見てきたので、緑がやけに濃く見えます。
ゲルが一軒。煙突から煙がまっすぐ上がっています。青いトラックが横付けしてあって、馬が二頭つながれています。
となりに送電線の鉄塔が立っていて、その組み合わせが少し不思議です。
豚が渡ります¶
豚が渡ります。
ゴビではラクダが渡りました。ここでは豚です。三頭が鼻を突き合わせながら、のんびり道を占領しています。プリウスは停まって待っています。
休憩所の駐車場で、これを見つけました。
UAZの屋根に、自転車がずらりと積んであります。数えると十台以上。
実は「自転車に乗りたい」とガイドさんにずっとリクエストしているのです。なので、この光景はちょっと気になります。
トイレ、スーパーマーケット、コーヒーショップ、レストラン。24時間営業のロードサイドステーションです。舗装路沿いには、こういう施設がぽつぽつあります。
真上をトビが回っています。休憩のたびに、だいたい何か飛んでいます。
ドローンを上げました。
舗装路と、そのわきに轍の道。両側は見渡すかぎりの畑です。ところどころ黄色い花が咲いています。
モンゴルで畑、しかも花畑。これは何を作っているのでしょうか。
遊牧民の家で昼をいただきます¶
村を通り抜けます。牛と馬が広場のような草地に寝そべっていて、その向こうに屋根の色が揃った家並みが見えます。
お昼はここです。遊牧民の家でご飯をいただきます。
本物の遊牧民の方で、旅行会社と契約して食事を出してくれる、という仕組みなのだと思います。
ゲルの横にKTMのオフロードバイクが停めてあります。その隣にはパラボラアンテナ。
中学生くらいの少年が、このバイクに乗って外の馬を厩に入れています。これが大変印象に残っています。馬を馬で追わないのです。
中へ入ると、ストーブの上で大鍋が湯気を立てています。
牛の乳を煮て、浮いてくる乳脂肪分を集めているのだそうです。表面が黄色く固まりかけています。
これをパンに塗って食べます。バターより軽くて、うっすら甘い感じです。
奥の器に入っているのは乳茶ですね。定番的な飲み物のようです。
家の方です。背にした壁いっぱいに、模様の入った絨毯が掛かっています。
もう一つの鍋には、羊の水餃子が入っています。おたまですくって、器に取り分けてくれます。
味はあまり付いていません。素朴な味です。
正直に書くと、お昼はもう羊ばかりで少し飽きてきました。6日目ですから、仕方ありません。
ゲルの中はこんな様子です。テレビがあり、その配線を子どもがいじっています。青い箱はバッテリーでしょうか。
この子はそのあと、スマホでショート動画を黙々と見ていました。遊牧民の暮らしと都会的な暮らしの、ちょうど狭間にいます。どういう感じがするのだろう、と思いました。
食器棚が二つ、時計、造花。テレビと電気があるので、パラボラアンテナと太陽光発電でライフラインを確保しているようです。水はタンクに溜めているように見えます。
外へ出ます。左手に洗濯物と生活道具が並んでいます。丘の緑が薄くなって、地面に砂が混じり始めています。
上から見ました。ゲルが三つと、車が三台。そこから一本の轍が舗装路まで伸びています。地平線の際に、うっすら町が見えます。
カラコルム¶
カラコルムに着きました。
恥ずかしながら、この時はよく知らないまま来ています。後から調べたら、ここはモンゴル帝国が最初に築いた都でした。
博物館に模型があります。
碁盤の目に区切られた市街と、その外に白い点が整然と並んでいます。ゲルの跡でしょう。都が丸ごと草原の上に置かれていたことが分かります。
一度失われて、今あるものは後から復元されたのだそうです。
博物館の近くに、こんな建物が残っています。二階の手すりに幾何学模様の彫りが入っていて、屋根は波板です。
裏に回ると、外階段が斜めに掛かっています。戸は白く塗ってあって、赤い縁取りが残っています。人は住んでいないようです。
エルデニ・ゾー¶
壁の上に、白いストゥーパがずらりと並んでいます。これがエルデニ・ゾーです。壁が丘の向こうまで続いていて、端が見えません。
壁の内側です。緑の瓦屋根の建物が三つ並んでいます。手前は草地で、何も建っていません。
正門から入ります。屋根の反りが深くて、四隅が鋭く跳ね上がっています。
中は薄暗く、天井から布の飾りが幾重にも下がっています。
仏様の顔をよく見ると、日本のものとは違います。頬が張っていて、目が細いのです。モンゴルの顔をしています。
入口を守っているのがこの神様です。青い顔に牙を剥き、髑髏の冠をかぶって、棍棒を振り上げています。左下に耳だけ写っているのは、乗っているラバです。
パルデン・ラモという護法尊だそうです。チベットやモンゴルで特に大事にされている神で、しかも女神です。股のあいだに逆さに下がっている人の顔の皮は、仏法の敵になった自分の息子のもので、その皮を鞍にしてラバに乗っているのだといいます。
これが門の左右に、一体ずつ立っています。日本のお寺の仁王とは、だいぶ雰囲気が違います。にらまれると素直に怖いです。
こちらは高僧の像です。金色の顔に、黄色い尖った帽子。周りの壁は、小さな仏画で埋め尽くされています。
あとで、外からドローンを上げてみました。
四角い壁がぐるりと回っていて、その中はほとんど空き地です。建物は北の一角に固まっているだけ。かつてはこの空き地も埋まっていたのでしょうか。
廃墟に馬がいます¶
そして廃墟です。またです。
青い門が開いていて、その脇の建物は屋根だけ残っています。奥にどこまでも敷地が続いています。
壁が落ちて、二階の床が空中に張り出しています。赤いレンガと白い漆喰が層になって剥き出しです。
大きいのが残っています。四階建て。赤レンガの妻壁がそのままの高さで立っています。
よく見ると、一階の柱の間に何かいます。
馬です。
崩れたコンクリートの下に、五、六頭が入り込んでいます。
中に入ると、もっといました。柱の林の間に、あちこち馬がいます。座り込んでいるのもいます。
日陰にいたいのだそうです。言われてみれば、外は日差しが強いのです。
リーダー格らしい馬の首には、GPSではないかと思われる箱が巻いてあります。野良ではなく、放牧中の飼い馬です。ここの日陰が気に入って、たまたま入り込んでいるだけなのでしょう。
白い馬が一頭、こちらを見ています。足元は瓦礫です。
壁際にずらりと並んでいます。壁には落書き。屋根の鉄骨がまだ残っていて、そこから光が落ちています。
今日はこれが一番でした。工場が壊れて、その隙間に馬が入ってきます。誰も追い出しません。
別の棟です。半分が崩れ落ちて、コンクリートの板がそのままの角度で斜めに刺さっています。屋上には木が生えています。
中は瓦礫の山です。腰の高さまで緑のペンキが塗ってあって、そこだけ工場だった頃の色が残っています。
配電盤です。蓋が開いたまま、端子が並んでいます。こういうものが好きです。
平屋のほうへ回ります。窓ガラスは全部割れていて、外には鉄の枠や機械の部品が積んであります。
中に旋盤が残っています。
モーターと主軸が付いたまま、瓦礫の中に置き去りです。壁は緑のタイル、床は割れたガラスと土。
ここでもドローンを上げました。屋根が全部抜けて、床の上に草が生えています。
向こうには、ちゃんと人の住んでいる町が見えます。
川があります¶
少し丘に上がると、川が流れています。
モンゴルで川を見るのは珍しいことです。ゴビでは水の流れをほとんど見ませんでした。
蛇行しながら、何本にも分かれて草原を横切っています。緑の濃いところが、水の通り道です。
この川があるから、ここに都ができたのかもしれません。
川岸に車が何台か停まっていて、テントが張ってあります。キャンプをしている人たちです。
水があると、人が集まります。
馬も来ています。浅いところに立って水を飲んでいるのと、対岸で草を食べているのと。奥は岩がむき出しの斜面です。
町を上から見ます¶
町の中心に穀物サイロが並んでいます。ここが農業の町なのだと、この一角だけで分かります。
町の規模はこのくらいです。一万人ほどが住んでいると聞きました。
四角い区画がびっしり並んでいて、その外はいきなり草原です。境目がはっきりしています。
日が傾きます¶
帰り道に、もう一つ廃墟がありました。土の壁に控え壁が等間隔で並んでいて、その上に石が積んであります。
夕方の光が斜めから当たって、壁の凹凸がくっきり出ています。奥に人が一人立っています。
これはソ連時代の脱穀機だそうです。
サイロのような塔とベルトコンベア、青いタンク。手前にトラクターが並んでいます。今は使っていないとのことでした。
夕日が正面から当たって、設備の影が長く伸びています。
そして畑です。刈り取った跡が縞になって、地平線まで続いています。手前を川が曲がりくねって流れています。
昼間に見た黄色い花のことが気になって、後から調べました。
モンゴルでは2000年代の半ばから、菜種の作付けがどんどん増えているそうです。小麦は輸出先が限られるのに対して、中国の油の需要はほぼ無限にあります。だから輸出用の換金作物として広がった、という流れでした。
ここオルホン川の流域は、モンゴルでは比較的水のある穀倉地帯にあたります。
草原で家畜を追う国、という思い込みがありましたが、それだけではないようです。
今日の宿¶
夕飯です。ライス、牛肉の煮込み、サラダ、野菜炒め。スープが別に付きます。
羊ではありません。それだけで、少し嬉しいです。
今日の宿は新しいゲルです。木のデッキが張ってあって、階段が付いています。
これはデラックスですね。
中はこの通りです。ベッドが三つ、真ん中に丸テーブル。天井の骨組みが新しくて、木の色がまだ明るいです。
ゲルに泊まるのも、これで何度目でしょうか。
天の川¶
夜になって、少し晴れました。
23時過ぎです。ゲルの列の向こうに、天の川が縦に立ち上がっています。
一番濃いところが、ちょうど地平線のすぐ上に来ています。左のほうに車と街灯。それ以外に光はありません。
薄い雲が横に流れていきます。それでも星は十分に見えています。
ゲルの列が下半分を占めていて、その上が全部空です。
これが撮りたかった一枚です。
草原にゲルが一つ置かれていて、その真上に天の川がまっすぐ立っています。雲が横切って、下のほうに影を落としています。
ゲルと、夏の天の川。目的達成です。
1時半を回ると、雲が出てきました。星はまばらです。
今夜はここまでにします。
6日目を終えて¶
- ウランバートルからカラコルムまで、草原を西へ移動しました。運転はほぼ奥さんです
- カラコルムはモンゴル帝国が最初に築いた都でした。今は一万人ほどの農業の町です
- エルデニ・ゾーは壁の内側がほとんど空き地です。上から見ると、その広さがよく分かります
- 取り壊し中の工場跡では、放牧中の馬たちが日陰で涼んでいました。日差しを避けて入ってくるそうです
- オルホン川の流域は菜種と小麦の産地です。あの黄色い畑も、おそらく輸出用の菜種です
- 夜は晴れました。ゲルの真上に夏の天の川が立ちます。0時を過ぎると雲が出てきました
明日でモンゴルの旅も終わりです。
自転車には、まだ乗れていません。
この旅の記事シリーズ¶
モンゴル 8日間の旅(2026年8月9日〜16日)
- Day 1: モンゴル テレルジ国立公園 - 仁川経由のゲル泊と、ガソリンのない首都
- Day 2: ゴビ砂漠へ - ツァガーン・スワルガの断崖と、ゲルに降る天の川
- Day 3: ヨリーン・アム渓谷とホンゴル砂丘 - ヒゲワシの谷と、動かなくなった車
- Day 4: バヤンザグ - 恐竜の卵が見つかった崖と、直らない車
- Day 5: ゴビからウランバートルへ - 廃墟に散らばる骨と、700キロの帰り道
- Day 6: セミゴビからカラコルムへ - 廃墟で涼む馬と、ゲルの上の天の川
- Day 7: モンゴル最終日 - 草原を自転車で走り、最後まで羊でした